matobaの備忘録

育児しながら働くあるエンジニアの記録

本の本質は、情報の記憶装置ではなく出力装置か

ぼーっと考え事をしていると、個人的に面白い気づきがありました。それを書きます。

始まりは先日のブログ記事で書いた冗談

先日、先日 紙の書籍についての話をブログに投稿しました。その中で、次のような文章を書きました。

紙の書籍を選ぶ理由はいくつかある。

例えば、目を休められる。仕事にしても趣味にしても多くのことがコンピュータを使って画面を見ている。可能な限り画面を見る時間を減らしていきたい。SNSを紙に印刷してみることはしないが、書籍は紙に印刷されたものを見る。

blog.mtb-production.info

改めて見返して、太字にした部分が特に印象的でした。確かに、SNSを紙に印刷することはありませんが、書籍は紙に印刷されています。

自分で書いておいてなんですが、あまり深く考えずに冗談と思って書いてました。少し距離を置いて冷静に考えてみると、この冗談が面白いと感じたので、少し考えてみます。

情報の閲覧媒体として紙を捉えている

「SNSを紙に印刷してみる」という行動は、紙を情報の閲覧媒体として捉えています。私はこれまで本は「情報の記憶装置」つまり「情報を保管する手段」だと認識していました。なので論理的に考えると「情報を保管するのであれば、デジタルの方が場所を取らない」という話に着地します。

ただ、とはいえ感覚的には、実際の紙の書籍の方が望ましいケースがあって、言語化できていないもののそちらを選んでいることは多々ありました。

今回、本は情報を閲覧するための手段としても存在していたことに気づきました。「情報の原本や1次情報は、別の場所にあり、それを他人に伝えるための一時的な表示領域が紙であり、それが束になったものが書籍である」と考えた時、「私はこれまで本の本質を勘違いしていたのではないか」と思いました。これが個人的に非常に面白いと感じたことです。

本は情報の記憶装置ではなく出力装置

これをコンピュータ的な言葉に直すと、「本は情報の記憶装置ではなく出力装置である。」ということになると思います。

本を情報の出力装置と考えると、様々な特性が見えてきますね。例えば、認証なしで閲覧可能な状態は、非常に脆弱性が高いと言えます。そのため、図書館のような管理システムが生まれたと考えると、何やら歴史が繋がってきます。

また、出力装置の管理が読む側にあることから、いつ読むかを読む側が自由に決められる点はブログなどのPull型情報共有に性質が似ています。これは本の大きな特徴だと思っていて興味深い。

紙は表示と維持のコスト効率が良い

そういう風に考えると、紙という媒体は、実際には非常にコスト効率が良い出力媒体だと思えてきます。

例えば、閲覧を待って情報をディスプレイに表示し続けることは、電気代やコストがかかます。複数の画面の情報を表示して放置し続けることも現実的ではありません。しかし、紙の場合、情報を出力して放置することが可能です。さらにメチャクチャ薄いし折れ曲がっても情報が簡単に欠落しない。この点で紙は非常に強力な情報を表示する媒体です。

なんなら、画面に情報を表示できるディスプレイは、「FPGAのようにソフトウェアでプログラムできるハードウェアデバイス」のように見えてきます。

新卒の頃に資料を印刷してた意味が変わってくる

この考え方を進めると、自分の過去の経験も別のように見えてきます。

働き始めて間もない頃、上の世代の方々が会議で議論をするために各種資料を紙に印刷して一部ずつ折り込んで配るような仕事をしていた時期があります。というか高頻度で大人数の会議に参加していましたし、色んな参加者から資料を受け取って、参加者の数だけ資料を印刷して冊子にする仕事が結構な時間を占めていたこともあります。

あれは、「先回りして情報表示のキャッシュのようなものを作ってたんだな」と自分の中で再解釈ができました。会議資料を印刷するのは面倒だったのですが、紙という媒体が持つ力を考えると大人数が同じ情報を表示して、スムーズに閲覧するための仕組みだったんだなあ、などと思ったりもします。

紙はポータビリティとコスト効率が高い

紙は、情報を物理的に持ち運びやすく共有しやすい媒体です。そして、長期間表示し続けるという観点で非常に効率的でコストパフォーマンスの高い方法が提供されています。

今回、このような新しい視点から紙の価値を再評価することは、テクノロジーが進化してもなお、古典的な媒体が持つ独自の価値を理解する上で重要に思えます。実は私は、「昔からある技術や物、文化が持つ独自の価値を再評価して、現代の技術で世に届ける」と言ったことを事業にしていきたい気持ちがあるのですが、その観点から見ても面白いように感じてます。

プリントと本の比較

プリントされた一枚の紙と本を比較した時の違いを考えると、本は印刷されてから読まれるまでの時間が長いことが特徴です。

印刷にかかる時間とコストを前もって支払うことで、大量生産により印刷コストを削減し、効率化が測られてます。この点から見ると、本も情報表示をキャッシュしたものと言えるかもしれません。

現代アートのアイデア

関連して、現代アートのアイデアを思いつきました。 まず、SNSの投稿をレシートに印字します。そして、それがどんどん捨てられていく様子を表現します。

このアート作品は、デジタル情報の儚さと物理的な媒体の永続性との対比を視覚的に表現します。なんかどこかで見たような気もしますね。

気が向いたら作るかもしれませんし、どこかで見つけたらまたブログで紹介しようかなと思います。

ではでは